最近のMacBook ProにはThunderbolt 3ポートが装備されていて、あらゆる周辺機器はこのポートを介して接続しなければなりません。ディスプレイも例外ではありません。
Thunderbolt 3やUSB Type-Cに対応したディスプレイの中には、接続したコンピューターに電力を供給できる(Power Delivery機能)ものがあり、そうしたディスプレイを使うとコンピューターはディスプレイケーブル1本だけで使えて大変お手軽、かつ、机の上をきれいに保てます。
というわけで、Thunderbolt 3 / USB Type-CのPower Delivery対応ディスプレイをまとめます。
Thunderbolt 3 / USB-C接続でPower Delivery対応のディスプレイ
LG UltraFine 5K Display
LGのUltraFine 5K Displayは入力端子としてThunderbolt 3(USB-C)ポートしか備えないという、強烈にターゲットを絞った製品です。
仕様は次のとおり。
項目 | 内容 |
---|---|
画面サイズ | 27インチ |
アスペクト比 | 16:9 |
パネルタイプ | IPS(ノングレア) |
解像度 | 5120 x 2880 |
輝度 | 500cd/m2 |
色域 | P3(99%) |
入力 | USB-C(Thunderbolt 3) x 1 |
USB-C電力供給能力 | 85W |
スピーカー | ○(5W+5W) |
カメラ/マイク | ○ |
音声出力 | ○(3.5mmステレオ) |
電源 | 内蔵 |
27インチでアスペクト比16:9の5K解像度でピクセル密度は218ppi。MacBook Proの227ppi(13インチ)/220ppi(15インチ)に肉薄する超高密度です。
パネルはIPSで表面処理はノングレアタイプ、とメーカーの仕様表には書かれていますが、ネット上の画像や動画ではどう見てもツルツル・ピカピカしています。もしかすると、表面処理のツルツル度に関係なく、反射防止のコーティングをしていることをもって「ノングレア」と表記しているのかもしれません。
輝度500cd/m2で色域はP3の99%をカバーします。
Type-Cポート経由の電源供給能力は今回紹介するものの中で最大の85Wで、MacBook Pro 15インチモデルに給電・充電するのに必要な能力を持っています。
カメラ、マイク、ステレオスピーカーを内蔵しています。
付属のパーツでVESAマウントにも対応。サイズは100x100mです。
電源は本体に内蔵されており、ACアダプターはありません。
基本的にAppleストアでしか購入できませんが、ネットの情報によるとASUSのThunderbolt拡張ボードを搭載したWindows PCでも使える模様です。
リンク:LG UltraFine 5K Display(Amazon)
LG UltraFine 4K Display
LGのUltraFine 4K Displayは、前出のLG UltraFine 5K Displayとは異なり、Thunderbolt 3に対応しないUSB-Cポートを備えたディスプレイです。
このため、Thunderbolt 3に対応していない12インチMacBookでも利用できることが特徴となっています。(Thunderbolt 3に対応したMacBook ProでもUSB-Cとして接続されて使えます)
仕様は次のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
画面サイズ | 21.5インチ |
アスペクト比 | 16:9 |
パネルタイプ | IPS(ノングレア) |
解像度 | 4096 x 2304 |
輝度 | 500cd/m2 |
色域 | P3(99%) |
入力 | USB-C x 1 |
USB-C電力供給能力 | 60W |
スピーカー | ○(5W+5W) |
カメラ/マイク | × |
音声出力 | ○(3.5mmステレオ) |
電源 | 内蔵 |
21.5インチでアスペクト比16:9の4K解像度。ただし、一般に4K解像度と言われる3840 x 2160ピクセルではなく、4096 x 2304ピクセルとなっていて、ピクセル密度は219ppiです。やはりMacBook Proに匹敵する超高密度です。
パネルはIPSのノングレアタイプ。(LG Ultrafine 5K Displayと同じく、ネット上の画像・動画ではツルツルしているように見えます)
輝度500cd/m2、P3の99%の色域をカバーする点もLG UltraFine 5K Displayと同じです。
Type-Cポート経由の電源供給能力は最大60WでMacBook Pro 15インチモデル付属のACアダプターの最大供給電力に及びません。このため、負荷の高い処理をしているときには、ディスプレイからの電力だけでは追いつかず、バッテリーの電力も消費されると説明されています。
Apple 「MacBook や MacBook Pro で LG UltraFine 4K Display を使う」
https://support.apple.com/ja-jp/HT207447
ステレオスピーカーを内蔵していますが、カメラとマイクはありません。
付属のパーツでVESAマウントにも対応します。サイズは100x100mm。
電源は本体に内蔵されており、ACアダプターはありません。
こちらも基本はAppleストア専売。Mac以外で使えるかは情報が見つかりませんでした。
リンク:LG UltraFine 4K Display(Amazon)
Lenovo ThinkVision X1
LenovoのThinkVision X1は一般的な4K解像度(3840 x 2160ピクセル)に対応した27インチディスプレイです。電源供給可能なUSB Type-Cポートに加え、DisplayPortとHDMIにも対応した汎用性の高いモデルです。
仕様は次のとおり。
項目 | 内容 |
---|---|
画面サイズ | 27インチ |
アスペクト比 | 16:9 |
パネルタイプ | AH-IPS(非光沢) |
解像度 | 3840 x 2160 |
輝度 | 300cd/m2 |
色域 | sRGB(99%) |
入力 | USB-C x 1、DisplayPort x 1、HDMI x 1 |
USB-C電力供給能力 | (推定)45W |
スピーカー | ○(3W+3W) |
カメラ/マイク | ○ |
音声出力 | ○(3.5mmステレオ) |
電源 | ACアダプター |
27インチでアスペクト比16:9の4K解像度。ピクセル密度は163ppiです。前出のUltraFine Display 2モデルと比べると低めの数値ですが、近くで目を凝らして文字の斜線部分に少しギザギザを感じるかどうかというレベルです。
パネルはAH-IPSのノングレア(非光沢)タイプ。輝度300cd/m2で色域はsRGBの99%をカバーしますが、いずれもLG UltraFine Displayには及びません。
Type-Cポートの電源供給能力は45Wらしく、MacBook Pro 13インチ(60W)、MacBook Pro 15インチ(85W)には足りません。
ステレオスピーカー、カメラ、マイクを内蔵しています。カメラは長いアームで位置や角度を変更可能。
3.5mmのヘッドセット端子もあるので、外部スピーカーへの音声出力等が可能です。
付属のパーツでVESAマウントにも対応します。(100x100mm)
電源はACアダプター方式です。
リンク:Lenovo ThinkVision X1(Amazon)
HP Envy 27(北米モデル)
HP Envy 27の北米モデルは一般的な4K解像度(3840 x 2160ピクセル)に対応した27インチディスプレイです。電源供給可能なUSB Type-Cポートの他に、DisplayPort、HDMIにも対応しています。
仕様は次のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
画面サイズ | 27インチ |
アスペクト比 | 16:9 |
パネルタイプ | IPS(半光沢) |
解像度 | 3840 x 2160 |
輝度 | 350cd/m2 |
色域 | sRGB(99%) |
入力 | USB-C x 1、DisplayPort x 1、HDMI x 2(2.0 + 1.4) |
USB-C電力供給能力 | 60W |
スピーカー | × |
カメラ/マイク | × |
音声出力 | × |
電源 | ACアダプター |
27インチでアスペクト比16:9の4K解像度ということで、仕様上の解像感は前出のThinkVision X1と同レベルです。
パネルはIPSのハーフグレア(半光沢)タイプ。輝度350cd/m2、色域はsRGBの99%をカバーします。
Type-Cポートの電源供給能力は60Wです。この数値はLG UltraFine 4K Displayと同じなので、MacBook Pro 15インチモデルでは高負荷時にはバッテリーの電力を利用するということになります。
スピーカー、カメラ、マイクはいずれも非搭載。音声出力端子もありません。
付属のパーツでVESAマウントに対応します。(100x100mm)
電源はACアダプター方式です。
このモデルには国内向けにEnvy 27sという類似モデルがありますが、こちらはUSB-Cポートに対応していないので注意が必要です。
北米モデルはB&HやeBayなどから購入できます。
リンク:HP Envy 27 4K UHD Display(B&H)
LG 27UD88-W
LG 27UD88-Wは一般的な4K解像度(3840 x 2160ピクセル)に対応した27インチディスプレイです。電源供給可能なUSB Type-Cポートの他に、DisplayPortとHDMIにも対応しています。
仕様は次のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
画面サイズ | 27インチ |
アスペクト比 | 16:9 |
パネルタイプ | IPS(ノングレア) |
解像度 | 3840 x 2160 |
輝度 | 350cd/m2 |
色域 | sRGB(99%) |
入力 | USB-C x 1、DisplayPort x 1、HDMI x 2(2.0 x 2) |
USB-C電力供給能力 | 60W |
スピーカー | × |
カメラ/マイク | × |
音声出力 | ○(3.5mmステレオ) |
電源 | ACアダプター |
27インチでアスペクト比16:9の4K解像度。解像度は前出のThinkVision X1、Envy 27と同レベルです。
パネルはIPSのノングレアタイプ。輝度350cd/m2、色域はsRGBの99%以上をカバーしています。
Type-Cポートの電源供給能力は60Wです。この数値はLG UltraFine 4K Display / HP Envy 27と同じなので、MacBook Pro 15インチモデルでは高負荷時にはバッテリーの電力を利用するということになります。
スピーカー、カメラ、マイクはいずれも非搭載ですが、3.5mmヘッドフォンジャックから外部スピーカー等への音声出力が可能です。
VESAマウント(100x100mm)に対応。
電源はACアダプター方式です。
MacBook向きのディスプレイはどれか?
以上を踏まえて、MacBookに適したディスプレイを選んでみます。
USB-Cの電源供給能力
MacBook Pro 15インチの消費電力は最大85W、MacBook Pro 13インチが最大60W、12インチMacBookには最大29W供給可能なACアダプターが付属しています。
まず、最大供給電力45Wと言われるThinkVision X1はMacBook Proシリーズに十分に電力供給するのは難しそうです。13インチの平常運転時は大丈夫そうですが、15インチになると平常時でも厳しいかもしれません。
次に、最大供給電力60Wグループ(LG UltraFine 4K Display / HP Envy 27 / LG 27UD88-W)は、MacBook Pro 13インチまでは安泰で、15インチでは状況によっては電力不足の可能性があります。ネット上には15インチでも問題なく使えているという情報がいくつか見つかりました。
LG UltraFine 5K Displayは電力供給に関しては死角なしです。
グレアかノングレアか
MacBookシリーズ本体のディスプレイはグレアタイプで、発色が良くコントラストの高い、非常に美しいものです。
今回ピックアップしたUSB-C対応ディスプレイにはグレアタイプを謳っているものはありません。
HP Envy 27のみが「アドバンスドヘイズ」という名前の半光沢タイプとなっています。
また、PC Monitorsの以下の記事によると、AH-IPSというパネルは低反射とヘイズの低減を両立させているそうで。
PC Monitors 「Matte vs Glossy」
https://pcmonitors.info/articles/matte-vs-glossy-monitors/
今回紹介した中では、ThinkVision X1がAH-IPSパネルを採用しています。
※ LG 27UD88-Wは当初の発表資料には「液晶方式:AH-IPS」と書かれていたのですが、現在の製品ページではIPSパネルとされているので、ここではAH-IPSではないつもりで紹介しています。
また、上の各機種の項に書いたとおり、LG Ultrafine 5K DisplayとLG Ultrafine 4K Displayは、「ノングレア」と言いながらわりとツルツルしています。
とすると、グレア派(というか、ヘイズ低減重視派)の方には、LG 27UD88-W以外のモデルが良さそうです。
内蔵電源かACアダプターか
電源をACアダプター化するメリットは、本体を小さく・軽くできるので、スタンドを華奢でスタイリッシュなものにできるなど、デザインの自由度が上がることです。
また、ディスプレイに接続するケーブルを細くできるので、デスク上の見た目もすっきりします。
反面、巨大なACアダプターをどこかに設置しなくてはならず、それをうまく隠す手立てが必要です。
今回紹介したものでは、LG UltraFine Displayシリーズが電源内蔵、その他はすべてACアダプター方式です。
スピーカーと音声出力の有無
ディスプレイにスピーカーを備えているモデルでは、音声出力のために別途ケーブルを接続する必要がありませんし、スピーカーを用意する必要もありません。
スピーカーがないモデルでも、音声出力端子があれば、別に用意したスピーカーを接続することで、PCやMacとスピーカーとの結線をしなくて済む場合があります。(DisplayPort、HDMI、USB-C接続ならまず大丈夫)
もちろん、スピーカーと音声出力端子のどちらもないディスプレイでも、MacやPCの本体側のスピーカーを利用することはできますが、設置の仕方によっては音が正面から聞こえてこない(MacやPCを設置したところから聞こえてくる)という不都合もありえます。
今回紹介した中では、HP Envy 27だけがスピーカーと音声出力端子のどちらも持たないモデルです。
LG 27UD88-Wは音声出力端子のみでスピーカーがありません。
LG UltraFine DisplayシリーズとLenovo ThinkVision X1はスピーカーと音声出力端子の両方を備えています。
まとめ 〜 決め手に欠けるラインアップ
以上、USB Type-C接続で電力を供給できるディスプレイのまとめでした。
LG UltraFine Displayシリーズの2機種は、ディスプレイの表示品質の面では他の機種を引き離していますし、電源内蔵で使い勝手も良さそうです。
しかし、接続相手が実質Macのみ(それも12インチMacBookとMacBook Pro(Late 2016以降)のみ)という強烈な割り切りのおかげで、踏ん切りをつけるのが難しいモデルです。
LenovoのThinkVision X1は、ThinkVisionらしいクールかつシャープな外観、可動式でライトまでついているカメラ、前面に配置されたスピーカーなど、機能面で他を圧倒していますが、USB-Cの電源供給能力が高くないので、MacBook Pro(13インチ・15インチとも)で使うには少し不安です。
HP Envy 27は、今回紹介した中で唯一の半光沢液晶モデルで、グレア派の救世主ではありますが、現時点では個人輸入でしか購入できず、また、スピーカーも音声出力端子もないので、PC/Mac本体のスピーカーで我慢するか、外部スピーカーを使うならPC/Mac本体から直接結線しなければならないという弱点があります。
最後にLG 27UD88-Wは、機能はEnvy 27同様に貧弱ですが、音声出力端子があるので外部スピーカーで一部を補うことができます。価格面でも27インチモデルの中では比較的買いやすいです。ただし、記事執筆時点でどこも在庫切れという超絶品薄状態です。
というわけで、どれも決め手に欠けるような気がしますが、汎用性を取るならLG 27UD88-W、MacBook Proでの安心を取るならLG UltraFine 5K Display、手頃なサイズで超高ピクセル密度を味わいたいならLG UltraFine 4K Displayがおすすめということになるかと思います。
リンク:LG UltraFine 5K Display(Amazon)
リンク:LG UltraFine 4K Display(Amazon)
リンク:Lenovo ThinkVision X1(Amazon)
リンク:HP Envy 27 4K UHD Display(B&H)
リンク:LG 27UD88-W(Amazon)