外国為替証拠金取引(FX)のスワップ金利がFX業者によってマチマチであることを利用して、金利の高い業者で通貨を買い、金利の安い業者で同じ額の通貨を売ることで、為替変動リスクを回避しながら金利分の差益を得ることができると言われています。
この記事では、過去の為替変動のデータを用いて、なるべく安全にスワップ金利のサヤ取りをした場合に、どの程度の利回りが見込めるかを計算してみます。
ご注意
投資はご自身で内容を理解した上で自己責任で行ってください。この記事を読んで行った投資で出た損失等について当サイトは責任を負いません。
この記事の内容
- 外国為替証拠金取引(FX)のスワップのサヤ取りの期待利回りを、過去のデータに基いて考えます。
スワップ金利のサヤ取りとは
外国為替証拠金取引(FX)のスワップ金利がFX業者によって異なることを利用して、金利の高い業者で通貨を買い、金利の安い業者で同じ額の通貨を売ることで、為替変動リスクを回避しながら金利分の差益を得ることです。
為替リスクが無いというのが売り文句ですが、実際には大きな変動に備えて証拠金を積んでおく必要があるので、濡れ手に粟のバラ色投資というわけではないようです。
どれくらいお得なものなのでしょうか。
スワップ金利を確認する
2015年3月後半の各社のスワップ金利を確認すると、オーストラリアドル対日本円で次の組み合わせが最も有利なようです。
取引 | スワップポイント(1日・1万通貨あたり) | FX業者 |
---|---|---|
買い | 75円 | ライブスター証券 |
売り | 46円 | DMM FX |
ライブスター証券で1万オーストラリアドルを買うと1日あたり75円の金利を受け取れ、DMM FXで1万オーストラリアドル売ると1日あたり46円の金利を支払う必要があるということです。
その差額は29円。1年365日で10585円。100万ドルなら105万8500円。
夢は広がります。
1年間の高値と安値の振れ幅を見る
マネースクウェア・ジャパンが提供している過去約8年の時系列データをもとに、この期間の任意の1年間の高値と安値の振れ幅を見てみます。
元データは以下にあります。
このデータによると、最も上昇の割合が大きかったのは2009年2月の安値55.56円から2010年1月の高値85.25円で上昇率は約53%、最も下落の割合が大きかったのは2007年10月の高値107.87円から2008年10月の安値55.05円で下落率は約49%でした。
以上の結果から、1年間に53%の上昇と49%の下落がありうるものとして考えてみます。
計算してみる
それでは計算してみます。
53%上昇する場合
現在のオーストラリアドルの対日本円のレートは約93円です。これが53%アップの142.3円になりうるとして、ぎりぎり必要な資金がいくらになるかを考えます。
スワップの儲けも取引のコストも、実際に売り買いする額に比例して同じ割合で生じますので、ひとまず売りと買いをそれぞれ10単位(10万オーストラリアドル)として考えてみます。
10万ドルは930万円ですので、レバレッジ25倍の場合に維持率100%になる証拠金の額は37万2000円です。これが売りと買いの両方に必要ですので、2倍の74万4000円が最低限必要な証拠金の額です。
この状態から、約4%以上レートの変動があると、一方の口座からもう一方の口座に証拠金を移動するだけでは維持率を保てなくなります。このため、レートの変動によって必要になりうる証拠金をあらかじめ準備しておきます。
前項のとおり最悪ケースでプラス53%の変動があった場合、必要な証拠金は全体で555万9200円です。これは、93円/ドルが142.3円/ドルになると、売った側の口座が499万円の評価損を出していますので、それとポジションを持つための証拠金56万9200円(142.3円/ドル × 100000ドル ÷ 25)とを合わせて555万9200円 という計算です。
なお、買った側の口座で499万円の評価益が出ていますので、純粋に為替の部分だけで見れば損も得もしていませんが、買った側の口座の証拠金は0円より下には下がりませんので、凸凹が大きくなると全体としては売った側の評価損の分だけ証拠金が嵩む仕組みになっています。
というわけで、このケースで用意しておくべき資金は555万9200円となりました。
49%下落する場合
現在のオーストラリアドルの対日本円のレート93円が49%減の47.4円になりうるとして、ぎりぎり必要な資金がいくらになるかを考えます。
その他の条件は上昇した場合と同じです。
スタート時点の10万ドルは930万円ですので、レバレッジ25倍の場合に維持率100%になる証拠金の額は37万2000円です。これが売りと買いの両方に必要ですので、2倍の74万4000円が最低限必要な証拠金の額です。
ここから、最悪ケースでマイナス49%の変動があった場合、必要な証拠金は全体で474万9600円です。これは、93円/ドルが47.4円/ドルになると、買った側の口座が456万円の評価損を出していますので、それとポジションを持つための証拠金18万9600円(47.4円/ドル × 100000ドル ÷ 25)とを合わせて474万9600円 という計算です。
というわけで、このケースで用意しておくべき資金は474万9600円となりました。
期待利回りは
以上から、49%下落した場合に必要な資金(474万9600円)よりも53%上昇した場合に必要な資金(555万9200円)の方が多いことがわかりましたので、上昇した場合の金額をもとに利回りを計算してみます。
前提をまとめると次のとおりです。
スワップ:
買い側:75円/1日・1万ドル
売り側:−46円/1日・1万ドル
売り買いの合計:29円/1日・1万ドル
スプレッド(実質的な売買手数料):
買い側:片道3.2銭/ドル、往復で6.4銭/ドル
売り側:片道0.7銭/ドル、往復で1.4銭/ドル
往復の合計:7.8銭/ドル
※ スワップ、スプレッドともに期間中同じ値が維持されることを前提とします。
計算式は次のとおりです。
((スワップの差益)−(スプレッド))÷(資金)
では計算します。
(29(円/日・万ドル)×365(日)×10(万ドル) − 7.8(銭/ドル)×10(万ドル)) ÷ 5559200(円)= 約1.76(%)
これをどう評価するか
過去8年の最悪ケースにギリギリ耐えられる準備をした場合の期待利回りは年1.76%となりました。ここから税金が引かれます。
先日のスイスフラン暴騰事件では、フランは円に対して1日で約30%上がりました。こういう極端な動きに巻き込まれると、いかに両建てで為替リスクを回避しているといっても、うまく切り抜けられるかはある程度運に左右されてしまうように思います。
そういうリスクも踏まえた上での利回り1.76%。決定打に欠けるような気がしますが、みなさんはどう見られますか?
まとめ
- FXの両建て取引でスワップ金利の差額をタダ取りしようという目論見は正しいのか検討しました。
- 過去8年の最悪ケースに耐えられる準備をすると、期待利回りは約1.76%とわかりました。
- 正直微妙な値になりました。悩ましい。