アメリカの電気自動車メーカーTeslaが家庭用の大容量蓄電池「Powerwall」を発表しました。
毎日充電して使うタイプのものは容量7kWhで価格は3,000ドル。既存の類似品と比べて大幅に安くなっています。
これを使って深夜電力だけで生活できれば電気代がものすごく安くなるんじゃないかと思って調べてみます。
Teslaの家庭用充電池「Powerwall」
4月30日にアメリカ・ロサンゼルスで行われたイベントで、Tesla Motorsの取締役会長兼CEOのイーロン・マスクさん自らが登壇して新たに発売する家庭用蓄電池「Powerwall」のプレゼンテーションを行いました。
「Powerwall」は10kWhと7kWh の容量を持つ2機種のラインナップで、それぞれ3,500ドルと3,000ドルで発売されます。
10kWhモデルは1週間単位で使用するもの、7kWhのものは1日単位で使用するものとのことなので、家庭で日常の電力をまかなうのには7kWhモデルが適しているように思いますが、昼間はソーラーパネルからの電力で賄い、夜間だけバッテリーに頼るような使い方なら10kWhモデルが便利かもしれません。
イーロンさんの話が壮大すぎる
イーロンさんはプレゼンテーションの中で、化石燃料を使った発電により大気中への二酸化炭素の放出量が増え続けており「It sucks」だと言われています。
その上で、アメリカにおける化石燃料による発電量に相当する電力を太陽光発電で賄うならば、これくらいの面積の太陽光パネルを設置すれば良いと言って一枚の地図を示しました。
青い四角の部分です。
テキサス州アマリロのあたりに描かれたこの四角は一辺100キロくらいの正方形なので、広さは1万平方キロメートルくらい。およそ岐阜県と同じ広さです。「たったこれだけ」というニュアンスで紹介されています。
そして、バッテリーの設置面積は地図上の赤い点くらいで済むらしいです。
さらに、地球上のすべての運輸、電力、冷暖房を合わせたエネルギーはTeslaが開発した業務用蓄電池が20億台あれば蓄えられる量だとして、20億台というのは大体地球上にある自動車と同じ数だからぜんぜん無理な数字じゃないよと言ってます。お、おう。
話が地球規模。
家庭の電力をすべて深夜電力でまかなうと安いのか
さて、たとえば東京電力には「深夜電力B」という料金プランがあります。
これは容量1kWあたりの基本料金が324円、使用量1kWhあたりの料金が12.16円というプランで、単位あたりの料金が安い代わりに午後11時から午前8時までの間だけしか電気を使えないというものです。
実際には従量電灯プランの契約も必要で、これに月額230.86円必要です。
これらの数字をもとに、すべての電力を深夜電力でまかなうと月額の料金がどうなるかを計算した結果が次の表です。
従来の電気代は一般的な「従量電灯B」の40Aのプランで計算しています。
使用量 | Powerwallの台数 | 電気代月額 | 従来の電気代 | 差額 |
---|---|---|---|---|
100kWh | 1台 | 2,032円 | 3,328円 | 1,295円 |
150kWh | 1台 | 2,771円 | 4,625円 | 1,853円 |
200kWh | 1台 | 3,510円 | 6,051円 | 2,540円 |
250kWh | 2台 | 4,573円 | 7,478円 | 2,904円 |
300kWh | 2台 | 5,312円 | 8,904円 | 3,591円 |
350kWh | 2台 | 6,051円 | 10,532円 | 4,480円 |
400kWh | 2台 | 6,790円 | 12,159円 | 5,368円 |
450kWh | 3台 | 7,529円 | 13,787円 | 6,257円 |
500kWh | 3台 | 8,592円 | 15,414円 | 6,821円 |
Powerwall 1台が約36万円なので、元を取るのにはざっと12年から25年掛かる計算になります。
まだダメだな。
家庭用ソーラーパネルと組み合わせて使うのが良さそう
深夜電力だけに頼るとあまりお得ではないようです。
ソーラーパネルを設置した家であれば、昼間発電した電力をPowerwallに充電して夜間に自家消費することで電力会社と契約せずに済むかもしれません。
自家発電した電力の買取価格はだんだん低くなってきていますし、今後新たな買い取りがされなくなる可能性もありますので、Powerwallによって余剰電力の自家消費の道が開かれたとすると良いことだと思います。
トヨタによってハイブリッドカー「プリウス」が生み出されたとき、その意味するところは地球環境保護とかエコとかロハスとかではなくて、石油会社の利益をバッテリーを売る会社(トヨタとその仲間たちですね)がごっそり奪い取るということだ、という解説がされていたように思います。
電気自動車と太陽光パネルとバッテリーでエネルギーの生成と消費のあり方を変えようとするTeslaの取り組みはその超大規模版のように見えます。
というわけで、家庭レベルの細かい損得は置いておいて、イーロンさんの地球規模の野望がどうなるのかを見守りたい。そんな気持ちになりました。