Mini-ITXフォームファクタ向け超コンパクトPCケース「A4-SFX v4」を導入しまして、この環境で動画編集を性能的な妥協なく行えるようにしたいと考え、そこそこのお値段で大容量VRAMを搭載したRadeon VIIを導入することにしました。
やったことを一通り紹介しますが、とりあえず恐れていた激熱・爆音ではなかったことに安心しております。
容量7.2リットルしかない超コンパクトケースにRadeon VIIを組み込みたい
ここ数週間のワタクシ的トレンドは超コンパクトPCケース「A4-SFX v4」に快適作業環境を構築することです。
こちらの記事で紹介しています。
上の記事ではグラフィックスカードとしてRTX 2070 Superを搭載したブロワーファンモデル「
ASUS TURBO-RTX2070S-8G-EVO」を使っています。
このカードはA4-SFX v4にセットできるグラフィックスカードの条件である、長さ295mm以内、高さ144mm以内、厚み40mm以内を満たしつつ、ミドルハイレベルのGPUであるRTX 2070 Superを搭載しています。
また、熱風をケース外に放出するブロワーファンモデルであるため、排熱面で厳しい超小型ケースで利用するのに向いているというメリットもあります。
で、実際に組んでみたところ、適度に低電圧化を施しさえすれば、熱も騒音も全く問題ないという結果を得られました。
この結果に気を良くした私は、より条件は厳しいものの、動画編集作業で高い能力を発揮しそうなAMD Radeon VIIを搭載したカードをこのケースに組み込みたいと考えるようになったのです。
AMD Radeon VIIの評判と価格
さて、2020年1月時点でAMDのGPUを選ぶとなれば、それはもうRadeon RX 5700 XT / 5700 / 5600 XTあたりが候補の筆頭に挙がるわけですが、これらはいずれもVRAM容量が6GBから8GBのモデルですし、処理能力的にもRTX 2070 Superを超えるものではないので、すでに2070 Superを持っている状況では、わざわざこれらを選ぶ理由はありません。
だから、あえてRadeonを選ぶなら、VRAMをなんと16GBも搭載したRadeon VII一択となるわけです。
NVIDIA RTXシリーズの現時点での最高峰RTX 2080 TiでもVRAMは11GB。現実的な価格で入手できるモデルの中からVRAM容量だけを指標に選ぶなら、Radeon VIIが最良の選択になるはずです。
それで、YouTubeを中心にRadeon VIIの動画を漁ってみると、その多くは「ファンがうるさい」という結論に行き着くものでした。
それには、Radeon VIIはなぜかシルバーのケースにトリプルファンを搭載したリファレンスカード仕様のものしか製品化されておらず、大型のファンをゆっくり回すオリジナルファンモデルが登場していないことが影響していると思われます。
しかし、一度気になってしまうと自分で試さずにはいられないので、思い切ってこちらの製品を購入しました。
リンク:XFX AMD Radeon VII 16GB HBM2, 1750 MHz Boost, 1801 MHz Peak, 3xDP 1xHDMI Pci-E 3.0(Amazon.com)
XFXという日本では見かけないメーカーの製品ですが、レビュー欄などを見てもとくに不都合はなさそうです。
購入時の価格は549.99ドル。送料と日本側の消費税等の費用が55.48ドル掛かって、合計605.47ドルとなりました。(この記事を書いているタイミングでは送料等がほんの少し安くなっているようです)
日本円にしておよそ6万8,000円ほどなので、国内で買うよりずっと安く済みますね。(国内だとPowerColorのものが9万7,000円、MSIのものは10万円オーバーです)
上記の送料はいちばん安い(=時間が掛かる)もので、到着まで約2週間掛かりましたが、あと25ドルほど追加すれば1週間未満で届くようなので、お急ぎなら送料はケチらないのがいいでしょう。
リファレンスカードのカッコよさ
そのようにして届いたXFXのRadeon VIIカードがこちら。
シルバーのケースの右肩にRadeonのRマーク。電源を入れると光ります。
そして天面にも光る「R A D E O N」の文字ががあります。
NVIDIAのFounders Editionのカードもそうですが、巨大なオリジナルファンモデルよりも、こうしたシンプルなやつがカッコいいと思う今日このごろです。
いつか水冷化したくなってもリファレンス版なら安心ですしね。
A4-SFX v4にRadeon VIIを組んでみたらこうなった
早速A4-SFX v4に組み込んだらこうなりました。
補助電源がRTX 2070 Superの8+6pinから8+8pinに変わったため、ケーブルの取り回しをやり直す羽目になりましたが、その他はとくに問題なくインストールできました。
アイドル状態ではファンの回転数は850回転付近で特にうるさいことはありません。(RTX 2070 Superの方は約1,000回転でしたが、こちらも静かでした)
すぐにAMD純正の「AMD Radeon Software」から低電圧化と電力制限を試みます。
結果、電圧は最大クロックで935mV、電力制限は最大幅の-20%で安定しました。
電圧の方はあと10mV下の925mVでも行けそうですが、常用する環境なので少しマージンを取っています。(910mVまで下げるとベンチマークを完走できませんでした)
温度はアイドルで32~33度、ベンチマーク中で最大65~66度といったところ。
騒音は温度が最大の状態ではアイドル状態では聞こえない「ウィーン」というファンのモーター音が発生し、風切り音も大きくなりますが、私の環境ではCPUファンの音の方がより気になる感じです。
というわけで、低電圧化+電力制限を施せば、激アツ・爆音という印象はありません。
ベンチマークの結果
安定したあとでベンチマークを回しましたので、3DMarkの結果をいくつか貼っておきます。(地の文でRTX 2070 Superの数値との比較も書いておきます)
まずTime Spy。
RTX 2070 Superが10490だったので、それより約13%ほど低いスコアです。
次にFire Strike。
こちらはRTX 2070 Superの21751より約5%良い結果になりました。
続いてNight Raid。
RTX 2070 Superの52069から約1.4%落ち。
最後にSky Diver。
RTX 2070 Superの56748に対して約5.8%アップとなりました。
テストにより得手不得手があるようですが、RTX 2070 Superとそう大きくは違わないと考えて良いかと思います。
とすれば、VRAMの容量が物を言うシチュエーションではRadeon VIIの強みが発揮されると期待していいでしょう。
少し戸惑ったこと ~ HDMI接続でのAMD FreeSyncの動作
我が家のPC用モニターはLGの32UD59-Bというモデルです。2年以上愛用しています。
このモニターはAMD FreeSync対応のGPUまたはAPUと接続すると、モニターとGPU(APU)の間でリフレッシュレートを同期させて、ティアリングやスタッタリングを抑えることができるものです。
このモニターとHDMI接続した状態で、Radeon VII側のFreeSync機能をオンにすると、Windowsを起動した直後に一時的に画面が乱れたり、ベンチマーク途中の(おそらく)解像度の切り替わりのタイミングで画面が乱れて戻らなくなったりというトラブルが発生しました。
モニターまたはGPU側でFreeSyncをオフにすれば解消するのですが、気づくまではハズレのカードを引いたかとヒヤヒヤしました。
なお、DisplayPort接続ではこの現象は発生していません。
というわけで、A4-SFX v4にRyzen 9 3900XとRadeon VIIという電気喰らいのCPU/GPUを組み合わせて、ひとまず安定して動作する環境を構築できました。
RX 5xxxシリーズが出たいま、Radeon VIIはいつディスコンになってもおかしくないGPUだと思いますので、興味のある方はお早めに手に入れられるといいと思います。
リンク:XFX AMD Radeon VII 16GB HBM2, 1750 MHz Boost, 1801 MHz Peak, 3xDP 1xHDMI Pci-E 3.0(Amazon.com)