ソニーがアクションカメラ市場に参入したのは2012年「HDR-AS15」という機種が最初だったと記憶しています。
当時はアクションカメラといえばGoPro、Drift、Contourあたりの海外製品が主流で、日本勢ではJVCがかろうじて参入していたくらいでしたが、製品の出来も広告の出来も海外勢に圧倒されていたという印象です。
ソニーはその後も順調に製品をリリースし続け、気が付けばアクションカメラ業界で存在感のあるメーカーの一つになりました。
そのソニーから世界で初めて空間光学ブレ補正機能を搭載したアクションカメラが発売されます。すごく欲しい。
国産アクションカメラは操作性がマシなものが多い
現在日本の比較的大きなメーカーでアクションカメラをリリースしているのは、ソニー、パナソニック、リコー、オリンパスの4社です。
かつてはJVCもこういうのを出していました。これ公式映像です。
しかし、同世代の海外勢が下のようなカッコいい映像を出している中ではまともな勝負になるはずもなく、いつのまにかフェードアウトしているようです。
JVCのはおじさん2~3人が自転車に乗ってはしゃいでる微妙なPVもあったような気がします。
宣伝費少なかったんだろうなあ。
上のGoProの映像はGoPro HD Hero2という機種で撮られた2011年のものですが、アマチュアが買って使うものとしてはこの時代にすでに十分高性能な製品が出ていることがわかります。
私も1台持ってますが、条件さえ良ければとてもきれいな映像が撮れます。
でも、操作性は最悪です。
防水やレンズ保護のために専用のハウジングに入れて使いますが、ハウジング越しに撮影の開始・終了や各種設定変更をするためには固いボタンを何度も何度も押さなければならず、素手では指が痛くてやってられません。
スキーやスノボやバイクのグローブ越しに操作することを考えて敢えて固めの操作感にしているのか、防水のパッキンを強く押し付けるためにそうなっているのかわかりませんが、とにかくボタンを押すときには気合が必要です。
押しミスったら撮れてるつもりが撮れてなかったり、動画のつもりが静止画になっていたりします。
また、2個しかないボタンですべての操作をするため、ちょっとした設定を変えるためにも10回単位でボタンを押さなければならず、非常にわずらわしいです。
アクションカメラの操作性の良し悪しの印象は用途によってさまざまだと思いますが、全体的な傾向として、国産各社の機種はメニュー操作専用のボタンが用意されているなど操作性の面ではいくらかましだと思って良いと思います。
アクションカメラでの撮影はブレとの闘い
多くのアクションカメラは超広角レンズを採用しています。
最大画角は狭いもので150度程度、広いものだと170度くらいあります。
画角が広くなると振れ幅大き目でスピードの遅いブレは気にならなくなるのですが、歩いていて足を地面に着いたときのような小幅で素早いブレには無力です。
アクションカメラはずっと身に着けるものなのでこうしたブレからは逃れられない宿命ですが、これまでの製品でこのブレに対して有効な対策を取ったものはありませんでした。
今回ソニーが採用したという空間光学ブレ補正のイメージがわかる動画がこちらです。
画面左下に「Simulated」とあるので、左側は補正ありの映像を元に補正しない場合をシミュレーションした映像ということだと思いますが、手持ちで歩きながら撮ったときによく見られる「ドシンドシン」と音がしそうな映像です。
これが右側のように安定した映像になるのならすごいことです。
この例は空間光学ブレ補正によってボディマウントの映像が安定するというものですが、オートバイのエンジンのような周期的な振動に対しては効果がない場合があるようで、そのようなときには別売アクセサリーの「モーターバイブレーションアブソーバー」というものを使えば改善するそうです。
ソニー 「オートバイで撮影するには」
http://support.d-imaging.sony.co.jp/www/ac_portal/features/mb/jp.html
既存の手振れ補正機能をオンにして振動多めのバイクのハンドルにマウントして撮影すると、なんとも言えないぐにゃーっとしたうねりのある不快な映像になるのですが、これが改善されるならとてもうれしいです。
4K撮影に対応した従来機種「FDR-X1000V」は手振れ補正時は画角が120度に固定されてしまう仕様でしたが、FDR-X3000では画角の選択も可能とのことで、これもうれしい改善です。
4KモデルとFull HDモデルがある
ソニーが今回発売するモデルには、4K解像度での撮影が可能な「FDR-X3000」と、Full HD解像度までの撮影が可能な「HDR-AS300」があります。
2機種の仕様を比較すると次のようになります。
FDR-X3000 | HDR-AS300 | |
---|---|---|
イメージセンサー | 1/2.5 Exmor R CMOSセンサー | 1/2.5 Exmor R CMOSセンサー |
総画素数 | 約857万画素 | 約857万画素 |
レンズ | Zeiss テッサ― 2.6mm/F2.8 | Zeiss テッサ― 2.6mm/F2.8 |
映像フォーマット | MP4: MPEG-4 AVC/H264 XAVC S規格: MPEG-4 AVC/H264 |
MP4: MPEG-4 AVC/H264 XAVC S規格: MPEG-4 AVC/H264 |
動画記録画素数/フレームレート | [MP4]PS: 1920×1080 60p/50p HQ: 1920×1080 30p/25p STD: 1280×720 30p/25p HS120(HS100): 1280×720 120p/100p HS240(HS200): 800×480 240p/200p [XAVC S 4K]30p/25p: 3840×2160 30p/25p 24p: 3840×2160 24p [XAVC S HD]120p/100p: 1920×1080 120p/100p 240p/200p: 1280×720 240p/200p 60p/50p: 1920×1080 60p/50p 30p/25p: 1920×1080 30p/25p 24p: 1920×1080 24p |
[MP4]PS: 1920×1080 60p/50p HQ: 1920×1080 30p/25p STD: 1280×720 30p/25p HS120(HS100): 1280×720 120p/100p HS240(HS200): 800×480 240p/200p [XAVC S HD]60p/50p: 1920×1080 60p/50p 30p/25p: 1920×1080 30p/25p 24p: 1920×1080 24p |
ビットレート | [MP4]PS: 約28Mbps HQ: 約16Mbps STD: 約6Mbps HS120(HS100): 約28Mbps HS240(HS200): 約28Mbps [XAVC S 4K]30p/24p: 約60Mbps/約100Mbps 25p: 約60Mbps/約100Mbps [XAVC S HD]120p/100p/240p/200p: 約60Mbps/約100Mbps 60p/30p/24p/50p/25p: 約50Mbps |
[MP4]PS: 約28Mbps HQ: 約16Mbps STD: 約6Mbps HS120(HS100): 約28Mbps HS240(HS200): 約28Mbps [XAVC S HD]120p/100p/240p/200p: 約60Mbps/約100Mbps 60p/30p/24p/50p/25p: 約50Mbps |
バッテリー | NP-BX1 | NP-BX1 |
サイズ・重量 | 約29.4 x 47.0 x 83.0mm・約114g(撮影時重量) | 約29.4 x 47.0 x 83.0mm・約109g(撮影時重量) |
同じ仕様のイメージセンサーとレンズ。
本体のサイズは全く同じ。
同梱の防水ハウジングも同じ型番。
バッテリーも共通。
違いは4K撮影の有無、HD解像度での高速度撮影(100pから240p)の有無と、本体の重さが少し違うくらいです。
なお、FDR-X3000でビットレート100Mbpsのモード(XAVC Sの4K解像度、および、XAVC SのHD解像度の200p以上)を使う場合はSDHC/SDXCカードはUHS-I U3以上が必要とされています。
その分少し高くつきますので予算に入れておくと良いでしょう。
ちなみに、ビットレート100Mbpsで1時間撮影すると45Gバイト必要ですので、1日中撮りっぱなしにするには相当な財力が必要ですね。
ソニーのサイトではバッテリーの持続時間には触れられていません。
従来機種の場合は、4K解像度30pモードの連続撮影時間が50分、HD解像度HQモードの連続撮影時間が125分となっています。(いずれもWi-FiリモコンOFFの場合)
バッテリーの型番は同じNP-BX1なので同等以上の撮影時間を期待したいですが、ブレ補正で光学系を動かすのに電力を使うはずなので、従来機種よりも短くなる可能性もあると思います。
マイク入力がある!
ソニーのアクションカメラの特徴として、マイク入力のためのステレオミニジャックを備えていることがあります。
もちろんカメラ本体にマイクはありますが、このちっこい穴なのでそれほど高品位に録音できないことと、風切り音をもろに拾ってしまうという弱点があります。
外部マイクを使えばより高品位に録音できるだけでなく、マイクだけ風が当たりにくい場所に設置して風切り音を避けることもできます。
GoProなども外部マイクに対応していますが、microUSB端子経由のためコンバーターが必要だったり、給電しながらマイクを使えないなどの問題があります。
外部マイクを一般的なステレオミニジャックで利用できることはソニーのアクションカメラの大きな利点です。
本体だけでIPX4相当の防滴性能
FDR-X3000とHDR-AS300は防水ケースに入れない状態でもIPX4相当の防滴性能があります。
IPX4は「あらゆる方向からの飛まつによる有害な影響がない」レベルの防水性能とされています。
ソニーのサイトでも「雨の日や水しぶきがかかるシーンでも本体のみで使用できます」とあります。
本体だけで水の中に沈めてしまってはダメだと思いますが、雨の中で使うくらいなら平気だと思われます。
GoProはHERO Session以外のモデルは本体に防水・防滴機能がないので、通常は同梱の防水ケースに入れっぱなしにして使います。
バッテリーやメモリーカードの交換のたびにケースを開ける必要があったり、外部マイクを使ったり給電しつつ撮影するためには別売りの穴あきケースを用意しなければならなかったりと、手間と費用がかかります。
本体だけでそこそこの防水性能があるのは大きなメリットです。
アクセサリーはGoProのものを流用しよう
GoProは長い歴史を誇るだけあって、アクセサリーが純正のものもサードパーティのものも非常に充実しています。
GoProのハウジングの下に設けられたこのような取り付け部にいろんなパーツをはめ込んで使います。
一方、ソニーのものは本体の底面に一般的な三脚穴が開いています。
ここを拠点にアクセサリーを取り付けていくわけですが、せっかくGoPro用に大量のアクセサリーが出ているのだから、それも全部使ってしまいたい。
もしすでにGoProのアクセサリーを持っているならそれらも無駄にしたくない。
そんなときにはこういうパーツで三脚穴をGoProのハウジングと同じインターフェースに変換することができます。
安いものですし、ひとつ持っておくと便利です。
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バランスの取れた名機の予感
以上、ソニーの新しいアクションカメラ「FDR-X3000」と「HDR-AS300」についてでした。
FDR-X3000とHDR-AS300は世界初の空間光学ブレ補正に対応し、最大で4K 30pまで(FDR-X3000)の超高解像度撮影に対応したアクションカメラです。
交換式のバッテリー、外部マイク入力端子、本体のみでの防水機能など、ライバル機種でも単体では対応している機能を、全部まとめて1機種に詰め込んでくれたことで、多くの場面で使いやすい潰しのきく機種になっていることが予想されます。
また、外部電源を用意することでより長時間の連続撮影が可能になるので、自動車やバイクのドライブレコーダー代わりに使うこともできますし、趣味の動画撮影でも大容量メモリーカードを突っ込んで回しっぱなしにして一瞬の撮り逃しもなくすることもできます。
外部電源で給電しながら使えるのか? というのはアクションカメラを買おうとするときに必ず抱く疑問なのですが、こうして公式サイトではっきり書いてくれるとは安心。
ソニーの「FDR-X3000」と「HDR-AS300」はアクションカメラに求められる要件をきっちり押さえた、痒いところに手が届くバランスの良い仕様を持っています。
どんな映像が撮れるのかは製品がリリースされてからいろいろなレポートが出てくると思いますが、少なくとも仕様上は名機の条件を備えていると言えそうです。
発売日は6月24日。現在予約受付中です。
リンク:ソニー デジタル4Kビデオカメラレコーダー「FDR-X3000」アクションカム FDR-X3000
リンク:ソニー デジタルHDビデオカメラレコーダー「HDR-AS300」アクションカム HDR-AS300