DropboxがDropbox Open Londonというイベントで開発を発表し、公式ブログでも紹介した「Project Infinite」という新機能が一部で話題を呼んでいます。
「Project Infinite」はDropbox上のファイルをローカルのストレージにダウンロードすることなく、ローカルのファイルと同じようにアクセスできる機能です。
なにが便利なのでしょうか?
Project Infiniteの概要とそのメリット
Project Infiniteの概要はDropboxの公式ブログで紹介されています。
Dropbox Business Blog 「A revolutionary new way to access all your files」
https://blogs.dropbox.com/business/2016/04/announcing-project-infinite/
Project Infiniteによって、クラウドストレージ上の大量のファイルが、あたかもローカルのHDDやSSD上にあるようにアクセスできるようになります。
これまでもDropboxアプリで同期するように指定したフォルダーには、Windowsならエクスプローラーで、Macならファインダーで、ローカルファイルと同じようにアクセスできていました。
この仕組みは、同期すると決めたDropbox上のフォルダーをまるごとローカルのHDDやSSDにコピーして、エクスプローラーやファインダーからはコピーされたローカルファイルにアクセスしつつ、クラウドとローカルとでファイルの差異が生じたときにはDropboxアプリがそれらを同期する(古い方を新しいものに置き換える)という一連の処理によって実現されていました。
しかし、従来の方式では、同期するよう指定したDropboxのフォルダーと同じサイズだけローカルディスクの容量が消費されてしまうため、Dropbox上に何テラバイトもデータがある場合にはすべてを同期できないし、HDD/SSDの容量が小さなラップトップなどではDropbox上の非常に限られたフォルダーにしかアクセスできないという問題がありました。
もちろん、ブラウザーでDropboxにアクセスすればすべてのフォルダーのファイルを参照したりダウンロードしたりはできますが、エクスプローラーやファインダーに比べると使い勝手が大きく劣るわけで、あまりスマートとは言えませんでした。
Project Infiniteではこのあたりの問題がまるっと解決されるということです。
デモ動画が公開されています。
- Dropbox上のすべてのファイルがエクスプローラーに表示される
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ローカルにダウンロード済みのファイルには緑のチェックマークのアイコンが、ダウンロードしていないファイルにはグレーの雲形のアイコンが表示される
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雲アイコンのファイルはローカルのディスクスペースを消費していない(ディスク上のサイズが0バイト)
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雲アイコンの(=ローカルにダウンロードされていない)ファイルもエクスプローラーでダブルクリックすると開くことができる
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ファイルやフォルダーをダウンロードしたいときは、右クリックメニューから行える
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デモでは10TB以上あるDropboxのフォルダーがエクスプローラー上でローカルファイルと同じように見えているが、ローカルディスクの消費量は28MB程度
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Windows 10、Windows 8、Windows 7、Mac OS Xのどれでも動く
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OSも何もアップグレードする必要はなく、Dropbox側の対応だけでこの機能が手に入る
これこそクラウドストレージのあるべき姿です。
昔はOneDriveでも同じようなことができた
MicrosoftのOneDriveはWindows 10でOSと統合されましたが、そのときにある重要な機能が封印されました。
それは「スマートファイル」という機能で、オンラインでのみ使うと指定したフォルダーやファイルをローカルディスクにダウンロードしないままエクスプローラーに表示し、ファイルを開いたときにはじめてダウンロードすることで、ローカルのディスク容量の消費を抑える仕組みでした。
つまり、DropboxのProject Infiniteと同じような機能です。
MicrosoftはWindows 10でスマートファイルを封印した理由を、Windows 8.1で一部のアプリからファイルを開けない場合があったり、ネットワークの速度によってはファイルのダウンロードがタイムアウトすることなどから、信頼性を向上させる必要があるとわかったためだとしています。
The OneDrive Blog 「Taking the Next Step in Sync for OneDrive」
https://blog.onedrive.com/taking-the-next-step-in-sync-for-onedrive/
DropboxはMicrosoftのこうした動きは当然知っているでしょうから、Project Infiniteではこのような問題もしっかり潰して製品化してくるのだと思われます。
Microsoftとしては、かつて独占していたスマートファイル機能的なものをより優れた形で他社に取られてしまうことになるわけで、OneDriveの責任者の方は今頃上司から激詰めされていることが予想されます。
OneDriveのためにOffice 365 サービスを2020年まで前払いしている私としても、OneDriveには早めにスマートファイル機能を復活させて欲しいと願っております。
参考:【期限迫る】Office 365の最大32%キャッシュバックがまもなく終わります
さて、今回発表されたProject Infiniteは現時点では「technology preview」という段階で、一部のユーザーに限定的に公開されているだけですが、間違いなく便利な機能なので、大きな問題がなければそう遠くない未来に一般に公開されるのだと思います。
クラウドストレージ(ほぼ)専業のDropboxが生き残りを賭けて繰り出す新技術に期待したいです。
Dropboxについてはこちらの記事でも取り上げています。
参考:【レビュー】Dropbox Pro 3年版はストレージ機能を重視するならかなりお得です