AMDのデスクトップ向けプロセッサーがアップデートされて「Ryzen 3xxxXT」シリーズが登場しました。
従来の「Ryzen 3xxxX」(Tなし)と比べてブースト時のクロック周波数が上がったわけですが、わざわざ買い替える必要を感じません。
その理由。
Ryzen 3xxxXTシリーズの改良点
今回ラインナップに加わったのは次の3モデルです。
12コアの3900、8コアの3800、6コアの3600にそれぞれ「XT」版が設定されました。
16コアの3950にはXT版は追加されていません。
で、従来の「X」版から今回の「XT版」への変更点はただ一点、最大ブーストクロックが少しずつ上がっただけです。
たとえば、3900Xと3900XTの比較では、ベースクロックは3.8GHzと変わらず、最大ブーストクロックが4.6GHzから4.7GHzに100MHzだけ上乗せされています。
その他の項目は全く変化なし。値段も499ドルと据え置きです。
ちょっと物足りない改良のように見えますが、そもそも昨年出た「X」版が衝撃的に高性能かつコスパが良かったためにそう見えるだけで、まだまだRyzen 3000シリーズの魅力は失われていません。
既存のRyzen 9からの買い替えは(ほぼ)不要な理由
私は昨年8月にRyzen 9 3900Xのオーナーになりました。
こちらはその3900Xを使って作った超コンパクトPCの話です。
その後、ケースをほんの少し大きなものに置き換えたりしながら使い続けています。
では、なぜ3900Xから3900XTへの買い替えが不要かというと、「XT」版で改善されたブーストクロックの上限をこうした小さなケースで利用できる見込みがないからです。
小さなPCケースの最大の弱点は各部の冷却性能の上限が低いことです。
ことにCPUにおいては、組み合わせられるCPUクーラーのサイズが小さくならざるを得ないことから、おのずと「どうにかベースクロックを割らないようにする」ことを目標に冷却を工夫することになります。
ブーストクロックの上限を極めるようなことは端から考えていません。
したがって、最大ブーストクロックが100MHz上がったことは、事実上何も変わっていないのと同じです。
であれば、「X」から「XT」に買い替える必要がないのはもちろん、これから小さなPCを組もうという方は今後価格が下がるはずの「X」版を買うのがいいことになります。
むしろ無印の「3900」を市販してほしい
小型PCケースユーザーとしては、むしろ「X」も「XT」も付かない「Ryzen 9 3900」を一般向けに販売してほしいと願っています。
Ryzen 9 3900は現在OEM向けにのみ出荷されている製品で、3900Xと比べてクロックを下げ、その分消費電力を下げたものです。
電気を使わないので発熱も比較的少なくなることが期待でき、それでいて12コア/24スレッドのメニーコア設計によりクリエイティブ系アプリケーションでは十分な性能が望めるという、まさに小さなケースで動画や写真を快適に編集できるPCを作ろうという人にとって理想のCPUです。
シングルコア性能はそれほど高くないのでゲームにはあまり向かないかもしれませんが、自作PCの用途はゲームばかりではありません。
これが3万円未満で買えるようになればバカ売れすると思うんですが…
というわけで、Ryzen 9 3900Xユーザーの私は、Ryzen 9 3900XTを買うことはないだろうという話でした。